筋筋膜性疼痛症候群・トリガーポイント施術 ラムサグループ

TMS理論(認識療法)との出会い

人生を変える出来事は何の前触れもなく現れるものです。
2001年の7月の蒸し暑い夕方、一人では歩けず、二人の方に両わきから抱えられるようにして相談に来られたのは30代前半の女性でした。 「椎間板ヘルニアで手術を勧められています。でも幼い子供がいるし、食堂を経営しているので入院はできません。何とか手術なしでこの痛みは治らないでしょうか?」と痛みに耐えながらの必死の依頼です。
 腰から脚にかけての激痛で歩くこともままならない状態で、医療機関での診断は「大きなヘルニアがあるので手術しかありません」ということだとの事。しかし、彼女には4人の幼い子供たちがいるし、パート従業員と2人で切り盛りしている食堂が収入源です。とても手術を受けて長期間入院することはできない状態だと言うことです。

 痛みは辛い、しかし手術となれば「子供達の世話はどうしよう・・」「売上げがなくなってしまう・・生活は・・パートさんの給料は・・」など、様々な思いが彼女の頭の中を嵐のように巡っているようでした。

 当時私は、長谷川淳史先生の著書「腰痛は怒りである」を読み、「椎間板ヘルニア」「腰椎分離症」などの痛みは、筋肉の緊張が酸素欠乏を起こして痛みを出している状態にすぎず、脊椎の構造的な異常が原因ではないという説を知り、長谷川先生の講座も受講して、その説の妥当性を検討し始めたばかりでした。 

 予約なしで来られたので、その方に使える時間は30分弱しかありませんでしたが、あまりに辛そうな様子でしたので、とにかく何とかしてみよう施術を始めました。 痛みと不安で身体は緊張状態で、軽く触るだけで強い痛みを感じます。身体と心をなだめるように筋肉を調整しながら、「椎間板ヘルニア」と痛みは関係がないこと、この強い痛みは筋肉が酸欠状態になって痙攣を起こしているにすぎないので、酸欠状態が回復すれば痛みも和らぐことなどを説明して行きました。 

 20分ほど経った頃、彼女の身体の緊張が抜け始め、顔にも変化が現れて来ました。そして「痛みが軽くなってきました」と言われるのです。起きて頂いたところ痛みはあるものの、ひとりで立てるし歩けるではないですか。これには本人も介助について来られた方も驚いていましたが、一番驚いたのは私でした。

 施術したと言っても、どこを触っても痛い状態でしたので、過緊張のところを優しく時間をかけて緩めた程度。しかし彼女は介助の方の手を借りることなく歩くことが出来るようになったのです。 

 この体験は不安や葛藤が、痛みを作ったり増大させる原因のひとつだという事を確信させてくれました。もしこの出来事が起こっていなければ、不安や葛藤がこれほどまでに痛みに影響を与える事を知らぬまま、従来通りのセラピーを繰り返していたに違いありません。この出来事が私の治療法や人生まで変えたのです。 

トリガーポイント・セラピーにおいても、心の問題は重要な要素ですから、セラピストにとって「認識療法」の活用は、無くてはならぬものだと思います。 

認識療法については次のサイトが参考になります。 

ramtha / 2010年6月23日