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「真の外交」

「平成二十六年八月五日」
 
 今朝の毎日新聞の二面には「欧州で反ユダヤ台頭」の見出しを掲げ、最近のパレスチナ自治区ガザ地区に対するイスラエルの激しい攻撃で、欧州各国でのユダヤ人への憎悪感情が高まり、それを憂慮する記事が記されている。
 日本からは遠い中東に位置するイスラエルと、そこに住むユダヤ人についての私の知識は、第二次世界大戦中ヒットラーによるユダヤ人大量虐殺事件があったことと、パレスチナ人の居住地に、戦後建国された国というくらいで皆無に等しい。
 
 ただ、パレスチナとの紛争で、戦力に勝るイスラエル軍の攻撃により、幼児を含むパレスチナ市民が多数被害を受けて居るにもかかわらず、日頃人道主義を唱えるアメリカがイスラエルの援助をしているとの最近の報道で、心穏やかならぬ嫌悪感を抱いているところである。
 
 顧みると、私のユダヤ人への嫌悪感の原点は、子供の頃読んだシェークスピア原作の「ベニスの商人」に登場する、ユダヤ人守銭奴シャイロックによるものではないかと思われる。
 いずれにしても確たる根拠のあるものではない。そこで、遅まきながら、とりあえず手もとにある広辞苑(一九八三年=昭和五八年版)の説明を書き写して、多少の知識を補充することにする。
 
(1) イスラエル
旧約聖書に見えるヤコブ及びその後裔たる十二部族の総称。パレスチナの東南方荒れ地に起こり、紀元前千数百年頃エジプトに居住した人々で、モーセに導かれてエジプトを出、カナンの地に至り、紀元前一二五O年頃サウルによってヘブライ王国を建設、紀元前九二六年北のイスラエル王国と南のユダ王国とに分裂、イスラエルは紀元前七二二年に、ユダは紀元前五八六年に滅亡。バビロン捕囚の体験を経て、イスラエルの宗教はユダヤ教として発展。
 シオニズム運動の結果、パレスチナに流入したユダヤ人が一九四八年(昭和二三年)イギリスの委任統治終了とともに建設した共和国。この国家の存在は中東紛争やパレスチナ問題の中で焦点となっている。首都はエルサレム。公用語はヘブライ語とアラビア語。面積二万平方㌖。人口三八七万(一九八〇年=昭和五十五年現在)
(注)カナン=聖書におけるパレスチナの称。神がアブラハムとその子孫に与えると約束した地。
 
(2) バビロン捕囚
紀元前六世紀ユダヤ人が約六〇年にわたりバビロン王ネブカドネザルによりバビロンに捕らわれたこと。
(注)バビロン=西アジアのチグリス・ユーフラテス川の下流に栄えた古代国家バビロニアの首都。バビロニアは、世界最古の文化の発祥地で紀元前三千年頃、すでに楔形(キッケイ)文字を使用していた。
 
(3) シオニズム運動
 パレスチナにユダヤ人国家を建設しようとする運動。一九世紀末に起こり一九四八年、イスラエル国家を実現した。
(注)シオン=エルサレム市街の丘の名。転じてエルサレムの雅名。
 
(4) ヘブライ語
 セム語族の西北セム語派に属する言語の一つ。古代ヘブライ語は、紀元前九世紀~前一世紀にパレスチナで用いられ、旧約聖書はこれで書かれた。一九四八年イスラエル建国とともに近代ヘブライ語が公用語に採用された。
 
(5) ユダヤ
 広義にはパレスチナ全土。狭義には、パレスチナ中部のエルサレムを中心とする古代ユダ王国の地をいう。
 
(6) ユダヤ教
 西南アジアに興った啓示宗教の一。モーセの律法を基礎として唯一の神ヤハウェを信奉し、イスラエルの民のために神の国を地上にもたらすメシア(救世主)の来臨を信じる。バビロンの捕囚以後に教団として発達。今日もユダヤ人の多くはイスラエルや世界各地で民族のこの信仰伝統に生きる。
(注)啓示宗教=人間の理性に基づく自然宗教に対し、神の恩恵によって示されたものに基づく宗教。
 
(7) ユダヤ暦
太陰暦の一種。ユダヤで行われ、月は新月の日に、年は秋分の頃に始まり、平年一二ヵ月、閏年一三ヵ月、閏年の第六月の次に置く。紀元前三七六一年一〇月七日を創世紀元と称する。
 
(8) パレスチナ
 西アジアの地中海南東岸の地方。カナンとも称し、聖書に見える物語の舞台。第一次大戦後、オスマン帝国から英国委任統治領。以後、シオニズムによるユダヤ人国家の建設が進捗。一九四八年(昭和二三年)イスラエル独立ともにイスラエルとヨルダンに分割されたが、一九六七年(昭和四二年)イスラエルはヨルダン領のヨルダン川西岸を占領。
 
(9) ヨルダン川
 パレスチナにある川。シリアのヘルモン山を水源に南流して死海に注ぐ。長さ三二〇㌖。イエスがここで洗礼を受けた。
 
(10)ヨルダン
 アラビア半島北西部の王国。第一次戦争後トルコ領地から英国委任統治領。一九二九年(昭和四年)トランスヨルダン王国となり、四六年(昭和二一年)独立。四九年(昭和二四年)ヨルダン川西岸地域を併合し、ヨルダン・ハシミテ王国と改称。住民は主にイスラム教徒で、アラビア語を使用。面積九万八千平方㌖。人口三一九万人(一九八〇年現在)首都アンマン。
 
 (11) PLO
パレスチナ解放機構。パレスチナ人を政治的に統治する機関として一九六四年(昭和三九年)成立。七四年(昭和四九年)アラブ首脳会議で、パレスチナ人の唯一正当な代表として承認され、国連オブザーバーの地位を得た。
 
 以上の基礎知識を頭に入れ、今一度新聞記事を眺めて見て、私なりに整理してみると、次のようなことが浮かび上がってきた。
 
一、ヒットラーの負の遺産を背負い反ユダヤ主義に最も神経を尖らせているドイツでも、「卑怯なユダヤの豚」「ユダヤ人をガス室に送れ」などと叫ぶ抗議デモがベルリンなどで頻発しているという。ドイツでは第二次大戦でナチスがユダヤ人の大量虐殺、ホロコーストを引き起こした反省から、特定の民族の中傷やナチス賛美は民衆扇動罪の対象となるにも拘らずである。
 
二、フランスでもユダヤ批判は法律で規制されているが、七月一三日にバリで行われた数千人規模の反イスラエルデモでは、一部グループがユダヤ教の礼拝場であるシナゴーグに押し入ろうとしてイスラエル支持者と衝突するなどの事件が発生している。
 
三、反ユダヤ主義があまり見られなかった英国でも、七月一八日に北東部ゲイツヘッドのユダヤ人学校近くでユダヤ教指導者(ラビ)が襲われ、イスラム教徒の若者四人が人種的暴行罪で起訴されたほか、ロンドンで行われたデモで「ヒトラーは正しかった」と書かれたプラカードが掲げられるような事件が発生しているという。
 
四、なお、英国のハモンド外相など欧州各国の政府高官までが、イスラエルの無差別攻撃を批判する発言をすることも伝えられている。
 
五、欧州各国の反イスラエル活動には、フランスで約五百万、ドイツで約四百万、英国では約三百万人居るといわれるイスラム諸国からの移民の急増も影響していると記されている。
 
 いずれにしても米露を除き、世界の多くの国からイスラエルが嫌われていることは間違いないようである。
 イスラエルのネタニアフ首相は、テロ撲滅のため今後もなお攻撃を続ける意向を示しているようだが、それでイスラエル国民の安全確保が達成出来ると考えて居るのだろうか。
 国際紛争を力で克服しようとする方法では、問題の解決が得られないことは、世界一の超大国アメリカがベトナムをはじめイラク・アフガニスタンなどで経験済みのことである。
 国民の恒久的安全を守るために一番大事なことは、世界中のどの国からも好感をもって迎えられるようにすることではないか。
 
 翻って、わが国日本はどうだろう。大戦後今日まで、戦争放棄の憲法を掲げ、一度も他国と戦火を交えることなく来たわが国が、他国から恐れられる筈はないと思われるが、どうもそうでもないらしい。
 七〇年前近隣諸国を戦火に巻き込んだ記憶は、まだまだ被害国民の中では、燻(くすぶ)り続けているのではないか。戦争には負けたものの、沖縄を除く本土では地上戦を免れたわれわれには、想像出来ないものがあるに違いない。
 先頃安倍総理は、集団的自衛権容認のための憲法解釈の変更を閣議決定したと伝えられ、これを巡って賛成、反対などさまざまな議論が行なわれているようである。
 
 今日の国際情勢にも法律にも疎い老骨の私には、その是非は分からないが、安倍総理の一連の言動を見ていると、軍備増強著しい中国を念頭に、対中国包囲網結成に世界各国を飛び回っているように見受けられる。
 諸外国の首脳と直接会議し意思疎通をはかることは、日本の安全保障と平和の維持にとって重要なことで、その努力は多いに評価されるべきものと思われるが、発展途上国の経済援助として札束をばらまいて回るだけでは相手の信頼を得ることは出来ないのではないか。
 
 先日、海外青年協力隊の若者がアフリカの僻地で、現地住民の生活向上に献身的努力をしている姿が放映されていたが、あのような活動こそ、日本に対する信頼を醸成することになるのではないかと思われたことである。
 
 福岡の医師平山哲氏が長年にわたり、アフガニスタンで井戸を掘り農地を開拓し、現地住民の信頼を得ているペシャワール会のような活動こそ、真の外交というものだろう。私には何をする力も智慧も持ち合わせて居ないが、こうした日本人の篤志家の地道な活動を官民あげて支援すべきことではないかと思われる。

ramtha / 2014年12月10日