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二月二三日 「政府に地方移転の意志があるのか」

かつては北海道有数の炭坑都市として繁栄した夕張市がエネルギー革命の荒波を受けた炭坑閉山により没落。 「財政再建団体」となり、市政運営が国の管理下に置かれたのは平成十八年のことだった。だから今年はちょうど十年目となる。今日の毎日新聞は、論説委員・人羅格氏による再生の現状と問題点に付いての論説が掲げられている。

夕張炭坑といえば、私にとっては、亡父母が新婚生活を過ごしたところと聞いて来たことでもあり、また、同じ石炭斜陽化で、かつての勤務先麻生産業(株)の炭坑閉山に関わった身としては、格別気になるところである。心に残った部分をいくつか転記する。

二月中旬、「ゆうばり小学校」を訪ねた。市内に六つあった小学校を一校だけに集約し、一つの校舎を改修して設けた児童二二一人の学校だ。

夕張の面積は全国の市でも六十位ほどと東京二三区を上回る。各地から児童は徒歩や路線バスなどを利用して通学する。「遠い子はバスで四十分かかるし、バス停まで歩く時間も長い。児童はだいぶ一体感がでてきたが、放課後の時間が取れないなど、やはり通学が課題です」
と白井啓裕校長は語る。

再生計画では今から十一年後の平成三八年度末まで毎年約二六億円を返済することになっている。かじ取り役の鈴木直道市長は三四歳。もともと支援のため派遣された東京都職員だったが、五年前に当時全国最年少の市長として当選した。
これまでに「借金」約三割を返済したが、その原資となったのが市民負担や行政サービスの水準切り下げなど徹底した経費削減だ。過去に住民が選んだ市長による行政の責任を、今の住民が共同で償っていることになる。

市民には標準より高い住民税率が課せられ、各種手数料や下水道料金も上乗せされている。市職員給与の大幅カットも返済の大きな財源となっている。行政サービスはぎりぎりの水準といえる。市立総合病院は診療所と老人保護施設に縮小され、救急患者の半数以上は市外に搬送される。図書館・美術館、多くの公園や集会所など公的施設も大半は閉鎖した。

閉山後の人口減少傾向に財政破綻は拍車をかけ、平成十八年から平成二七年までに人口は一万三二六八人から九四〇九人へと約三割も減った。

現役世代を中心に人口流出は加速し、地元高校へ進学する生徒も減少している。働き盛りや若い世代が夕張を離れたため、高齢化は著しい。六五歳以上の人口が占める比率は、約五割もあり、全国平均の約二倍の水準にある。

以上特に目に付いたところを拾い上げたが、現地を見たこともない私にも、荒廃した街の風景が目に浮かんでくる。外出もままならぬ五体不自由の私は、飯塚市を中心とするかつての炭坑跡地がどうなっているかも分からないが、夕張のようには荒廃してはいないに違いない。

しかし、少子高齢化と過疎化が急速に進行していることを考えれば、筑豊地方も遠からず、夕張への道を転がり落ちて行くものと思われる。また単に旧炭坑跡地に限らず、全国の多くの市町村が同じ運命を辿るものと考えられる。

政府はようやく地方再生のために、中央官庁の地方分散に乗り出そうとしているが、今朝の新聞には次のような記事もある。

政府が進める中央省庁の地方移転で課題が表面化している。消費者庁は板東久美子長官が三月に徳島県で業務を試行する際、毎週金曜日に首相官邸で開かれる次官連絡会議にテレビ会議システムで参加することを検討しているが、官邸が難色を示している。京都府に一部機能が移転する文化庁でも、関係省庁との調整に弊害が出るとの懸念が出ている。

消費者庁は三月一三日から一週間、板東氏ら計九人が同県神山町に滞在する予定だ。河野太郎消費者担当相は二〇日、徳島県内での街頭演説で、次官連絡会議に関し「徳島からテレビで参加すればいい」と語った。ただ、官邸関係者は否定的だ。安全保障や機密を扱うこともある会議を遠隔地と結べば、情報漏洩などの危険が増すためだ。

一方、自民党地方創生実行統合本部の鳩山邦夫本部長は二四日、文化庁の青柳正規長官と会談し、移転実現を迫った。青柳氏は「関係省庁とのすりあわせによる相乗効果が害されたら困る」と懸念を示した。

私が現役で実務についていた時も、何か新しいことを提案すると、まず反対する人が必ず現れる。もともとネガティブな性格か、自分の都合を基準にするのか分からないが、必ずそういう人が居る。

今の状態をそのままにしては、何も変えることはできない。新しい計画を実現するための障害となることを考え、それを克服することをやらなければ、いかなる改善改革もできるものではない。
今回の中央官庁の地方移転には、それに伴い変更改革しなければならない事項は無数にあることと思われる。それを一つ一つ潰して行くのが担当者のやるべきことで、反対の理由ばかりを数え上げるのは、問題の本質を理解し実行する意志のある人のすることではない。
中央官庁の地方移転は、日本全土の再生という大目標のために行なわれるもので、如何なる困難があろうとも、それらを克服し、是非とも達成しなければならないことは、常識ある国民は誰しも理解しているところと思う。

にもかかわらず、地方移転の指揮をとり、重い腰の各省庁を立ち上がらせるべき官邸自身が難色を示しているというのでは、政府は初めからやる気が無かったのではないか。地方崩壊を憂える世論の手前、とりあえず恰好だけつけたとしか思われない。

ramtha / 2016年5月19日