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四月十日 「青年海外協力隊の功績」

新聞紙の整理をしていたら、四月一日付けの毎日新聞に、客員編集委員・西川 恵氏の「協力隊のこれから」と題する次のようなコラムがあった。

集団的自衛権の行使が可能となる安全保障関連法が施行されたのと同じ三月二九日、日本の途上国援助の実施機関、国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長に、「これからのJICAボランティア」と題する提言が渡された。

JICAボランティアは昨年発足五〇年を迎えた青年海外協力隊のことで、JICAは昨年六月、外部委員による懇談会を設け「今後、同協力隊はどうあるべきか」
の検討を委ねた。私も委員として議論の末端に加わって、感じたことが幾つかある。

一つは、同協力隊が途上国だけでなく、日本社会にとっても貴重なアクターとなりつつあることだ。この五〇年、JICAは延べ四万人の隊員を途上国八八力国に派遣した。応募で選ばれた二〇歳から三九歳の隊員は二年間、現地に溶け込み、共に汗を流し、現場の大切さを身をもって示しながら、それぞれの専門を指導してきた。農漁業、保健、教育、防災、スポーツなど多岐にわたる。

こうして現地でもまれることで隊員たちが身に付けた異文化適応力、対話力、課題解決力を、国内の地域おこしや被災地支援で役立ててもらおうとの考えがいま生まれている。実際に東日本大震災の被災地に入った元隊員も少なくない。隊員たちの能力に注目する企業が社員をJICAに送り込んだり、「協力隊員特別採用枠」を設けたりする自治体も年々増えている。

提言でもこうした現状を踏まえ、隊員の社会的貢献を積極的に後押しするための施策をJICAに求めた。同協力隊が日本の社会システムの中にガッチリと組み込まれれば、国力を底上げする。

二つ目に感じたことは、同協力隊が戦後日本の国際貢献を最良の形で示し、これが日本に対する信頼を築いてきたことだ。アジアの多くの国が安全保障関連法案を支持したが、同協力隊の五〇年の存在と無関係ではないと思う。

安全保障関連法の施行とJICAボランティアの提言が同じ日になったのは偶然だが、極めて示唆的である。この二つは日本の安全保障政策面において、ある意味ハードとソフトの両輪を形成するからだ。安全保障関連法が防衛力というハード面で抑止効果を図るとするなら、JICAボランティアは人間力というソフト面から国際社会の日本に対する信頼を担保する。

安全保障関連法のハード面だけが注目されるが、五〇年にわたり日本がソフト面で地道な努力をし、安全保障を補強してきたことはもっと語られていい。

この西川氏の見解には全く賛同する。かねて島国に住む日本人は海外の異文化や異民族に接する機会が少ないことが気にかかっていたが、グローバル化がしきりと言われる今日では特にその点の補強が痛感される。

しかし、海外旅行を奨励しても、短期間の見学では、ここにあげられている異文化適応力、対話力や課題解決力も身に付けることは殆どできない。そうしてみると、JICAに要する予算をなんとか捻出して、青年海外協力隊員を増員してほしいものである。

国会議員や地方議会の議員が海外視察を名目に、外遊している者が毎年少なからず居るようだが、それらの経費を削ってでも、青年海外協力隊事業は、ますます拡大充実してもらいたいものである。

ramtha / 2016年6月28日