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四月二八日 「足るを知らざる国」

今朝の毎日新聞には「足るを知らざる国」と題する次のような専門編集委員・坂東賢治氏の論説が載っている。

中国の一九六〇年代の文化大革命期に必読とされた毛沢東主席の講話の一つが、「愚公、山を移す」だ。山を削って海に埋めようとした老人の故事から、勝てない敵はいないと強調する内容だった。

香港に駐在していた九二年、広東省珠海市で高さ100m超の山を一瞬で爆破するのを見て「本当に山を移そうとする人たちなのだ」と驚いた。海に隣接する山にトンネルを掘り、原爆に近い爆発力という大量の黒色火薬を配して吹き飛ばしたのだ。土砂の一部はそのまま海を埋め、空港の拡張に利用された。
「よくそんなことを考えつくな」というのが正直な感想だった。人間が力で自然を征服することへのためらいのなさに違和感を覚えた。

百万人以上が移転を迫られた三峡ダム建設を取材した際にも似た気持ちを抱いた。中国国内にも反対論はあったのだが、封じ込まれた。
その後はどうか。環境汚染への反省から、自然との共生や持続可能な発展が強調されてはいる。しかし、巨大事業、最先端プロジェクトヘの欲求は減っていない。

南シナ海に造成した人工島もそうだ。本土から遠く離れた海に二年弱で総計十二平方kmもの埋め立て地を造成した。海上に造成された関西国際空港を上回る面積だ。

今月公表されたのが、浮体式の海上原発構想だ。船に原発を搭載したような移動可能な小型原発を二十基近く建造し、海洋での石油開発などに電力を供給するという。

中国では九十年代以降、高速道路や高速鉄道網、原発などのインフラ整備が急速に進んだ。一見、共産党の一党独裁が効率を高めたようにも思えた。しかし、中国が世界第二の経済大国となり、最先端の科学技術力を持ち始める中、制御なき拡大主義は世界との摩擦要因となっている。

人工島建設は米国との対立を激化させた。海上原発が東シナ海や南シナ海を浮遊すれば日本など周辺国とのトラブルの種になることは確実だ。

世界で初めて「ゲノム編集」技術を用いた受精卵の遺伝子改変実験に踏み切るなど生命倫理の基準にも、懐疑的な目が向けられている。

日本や欧米にも科学万能を信じ、開発優先で公害などを引き起こした時代はあった。しかし、民意や宗教的倫理観が行過ぎを抑制してきた。

中国にも「禍(わざわい)は足るを知らざるより大なるは莫(な)し」という警句がある。満足を知らないことが最大のリスクという意味だ。今の指導者がかみしめるべき言葉ではないか。」

これを読んで考えさせられたことを、整理してみる。

① 「愚公山を移す」と類似の諺には「点滴石をも穿つ」など、幾つもあるようである。ともすると諦め易い凡人を戒め、持続的努力を勧めるものが多い。しかしここに見る「愚公山を移す」はいささか違うようである。そこでこの諺の原義を広辞苑に尋ねてみると、次のように解説されてある。

「北山の愚公が、齢九十にして通行に不便な山を他に移そうと箕で土を運び姶めたので、天帝が感心してこの山を他へ移した、という寓話。たゆまぬ努力を続ければ、いつかは大きな事業もなしとげ得ることのたとえ」

これをみると広辞苑の解釈にはいささか違和感を感じる。この寓話は本人が事業を成し遂げたのではなく、本人の努力が幸運を招いたのであって、「点滴石をも穿つ」とは異なるものではないかと思われる。

② 坂東氏が中国の習近平執行部の前進主義にこの諺を当てたのは、人力だけでは困難な問題も解決できるという思い上がった行動を示すのに適切な表現と思われる。

毛沢東も習近平も「愚公山を移す」を勝てない敵はないと言う意味に誤解しているのである。愚公の行為は人々の交通の便利が目的であり、毛沢東も習近平も自らの権力拡大を目指し、周辺各国の迷惑を無視している。これでは天帝も手助けする気にならないに違いない。

③ 中国が東亜の盟主であった栄光を取り戻したいのなら、かつての周辺国の朝貢に対して、倍する賞賜を与えたように、周辺国に便宜や利益を与えることを考えなくてはならない。しかし、今の中国共産党には、そんな考えは毛頭なく、ひたすら相手国から収奪を狙って居るとしか思われない。それでは世界の覇者はおろか、東亜の盟主も覚束ない。

ramtha / 2016年7月2日