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六月五日 「言葉に付いて考える?」

普段私たちは、日本中どこでも日本語で通じるから、何処へ行っても不便はしないと思っているが、鹿児島の薩摩弁や青森の津軽弁の中には、分からない言葉が少なくない。初めて上京したときは、北九州の田舎弁を笑われないよう、人と話すときは、ずいぶん緊張したことを覚えている。

田舎弁は方言ともいわれ、その上にあって、何処で話しても恥ずかしくないのが標準語と、漠然と考えているが確かなことは知らない。ついでに広辞苑の解説を見ることにした。そこでは次のように書かれている。

標準語=一国の規範となる言語として、公用文や学校・放送・新聞などで広く用いられるもの。日本語ではおおむね東京の中流階級の使う東京方言に基づくものとされている。共通語。公用語。

方言=
①一つの言語において、使用される地域の違いが生み出す音韻・語彙・文法的な相違、地理的方言。
②ある地方だけ使用される語。俚言。

弁=言葉づかい。方言。「関西弁」など。

ところで世界中にはいろいろな言葉がある。田中克彦氏の「ことばと国家」によると「人によっては、三千くらいと言ったり、いや六千にも達するであろうと言う人もいるが、いずれにせよ、その数はきわめて大ざっぱなものである。ときにフランス・アカデミーが、かつて二七九六と自信たっぷりな数字を出したが、そうした数字はとても永く持ちこたえられるものではない。というのは、その後、世界のいろいろな場所で、ある言語の話し手が亡くなったという報告が寄せられれば、そのたびに言葉の数も減っていくからである。しかし、おそらくは、減るより増える方がずっと多いように見える。というのは、言葉は滅びる一方ではなく。新たに作り出されてもいるし、その上、まだ調査されずに残っている未知の言葉が幾つでもあるからである」という。

それはともかく、私たちは、日本語と言えば日本人の国語であり、日本中何処でも通用するものと思っているが、鹿児島弁と津軽弁の会話ではずいぶんと難儀するのではないか。もっともラジオ、テレビが全国各地に普及してからは、多少の訛りはあるにしても、通じないなどと言うことはないに違いない。

そこで韓国語、中国語、ドイツ語、ポルトガル語などその国の名が付いた言葉はその国の何処でも通用し、その国の国民は誰でも使用するように思いがちだが、なかなかそうではないらしい。手当り次第におもな国の言葉を調べてみる。

韓国では使用する国語を韓国語と言うが、同じ民族で同じ言葉を使用する北朝鮮では、多分朝鮮語と称しているのではあるまいか。国が分断されて約七〇年にもなるが言葉は今も変わりなく通じることだろう。

中国語といえば、あの広大な地域全土に住む人々が誰しも使用する言葉のように思われるが、住民の大半を占める漢民族の言葉、いわゆるシナ語である。そのシナ語には北京語、上海語、度門(アモイ)語、広東(カントン)語、客家(ハッカ)語、湖南語、南昌語の七大方言がある。更に中国にはモンゴル、チベットなど主に周辺に住む少数民族のそれぞれが使用する言語がある。

七大方言とは言うものの、その間の違いは、鹿児島弁と津軽弁の違いをはるかに超えるものではなかろうか。

余談になるが、中国では古来表意文字の漢字を使用して来たから、発音は変わっても、意味は時空を超えて変わらない。そうしたことが、発音を軽視する傾向があったのではと想われる。

台湾語は厦門語と同じであるが、台湾人は自分たちの存在を強調する気持ちからか、台湾語と称している。

なお、日本と中国、台湾は古来漢字を使用しているが、今日では、日本は複雑難解な漢字を避けた常用漢字を、中華人民共和国では甚だしく簡略化した簡体字を使用している。しかし、台湾では伝統的な本来の漢字を今も使用しているらしい。

さらに付け加えると、日本では表意文字の漢字の他に表音文字のひらがな・カタカナを作り、「漢字かな混じり文」として使用している。特に外来語にはカタカナで対応する工夫をしているが、そのあたりのことは、表音文字を持たない中国や台湾では、どうしているのだろう。

英語はイギリスの国語として発生したが、今や世界の共通語となっている。英語を書き表すアルファペットは、同じ「a」を、アと発音したり、エイと発音したりするので、表音文字とは言えない。それは他の欧米語の文字も同様であり、そのために別に発音記号を必要とする。だから、私はアルファベットは単語を構成する要素に過ぎず、敢えて言うなら「表語文字」とでもいうべきものと考えている。

英語はイギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどで用いられるが、広く世界中で通用し、世界の共通語となっている。しかし、世界中に普及しているにもかかわらず、イギリスの一部であるウェールズに住むケルト族は、ウェ-ルズ語と英語を併用しているという。

オーストラリア諸語はオーストラリア先住民の言語。ヨーロッパ人上陸時には六百ほどの言語があったとされるが、現在はそのほとんどが絶滅。最大のワルピリ語で話者は約数千人という。

ニュージーランドの先住民はポリネシア系のマオリ人。イギリス領から1947年独立。

ドイツ語は南部の高地ドイツ語と北部の低地ドイツ語とに大別され、一般には前者を言う。ドイツ連邦共和国のほかオーストリア・スイスーリヒテンシュタインの公用語でその周辺諸国でも話される。

スイスはドイツ語のほかフランス語・イタリア語・口マンシュ語を公用語とする。ロマンシュ語はレトーロマン語の一つ。スイスの四つの公用語の一つ。

フランス語はフランス、スイス西部、ベルギー南部、カナダ(ケベック州)、ルクセンブルグなどで使用される言語。

ベルギーは、主にフランス語方言とオランダ語方言に分かれ、オランダ語・フランス語・ドイツ語を公用語とする。

カナダはかつての宗主国の英仏の争奪戦の名残りであろうか公用語は英語とフランス語となっている。

イタリア語はイタリア、スイスなどで用いられているが、方言が多いそうである。

スペイン語は、スペイン本土のほか、中南米のメキシコーペルー・アルゼンチンなど多くの国で使われている。

メキシコ語は旧宗主国スペイン語を話す。

ポルトガル語はポルトガルとブラジルの公用語。アジア、アフリカの旧ポルトガル植民地でも話される。

ブラジルは南米で唯一ポルトガル語を使用する国。

デンマーク語はデンマーク本土のほか、植民地グリーンランドーフェロー諸島で用いられている。

アイスランド語はゲルマン語派北ゲルマン語群に属す。

ポーランド語は西スラブ語群に属する言語。ポーランド本土のほかアメリカにも話し手が多い。

ロシア語はロシアやその周辺諸国などで話される。スラブ語派東スラブ語群に属する。現代ロシア標準語はモスクワ方言に基づくと言うが、あの広い国土では方言の
違いも大きいのではないだろうか。

ノルウェー語 ノルウェーで使用される。ゲルマン語派北ゲルマン語群に属する

スウェーデン語 スウェーデンのほかフィンランドでも公用語の一つ。ゲルマン語派北ゲルマン語群に属する。

フィンランド語 フィンランド共和国の公用語。ウラル語族のフィンーウゴル語派スウェーデンやエストニアにも話す人がいる。

アラビア語はアラビア半島、イラクーシリア・北アフリカで用いられる。正則語と通俗語があり、前者はコーランに基礎を置き文語・公式語として用いる。セム語派南西セム語群に属する。

以上さまざま言語を概観してきたが、国名を冠したものでも、その国以外で使われているものが多い。アラビア語のように中東から北アフリカにかけて広く使用されているものもあり、また逆にスイスのように、一つの国で幾つもの公用語がある国もあり、国と人種と言語との関係は一筋縄で行かないことを思い知らされた。

これを見て語学を最も苦手とする私は、日本に生まれ生涯を日本で過ごすことができた幸せをつくづく感じたことである。

ramtha / 2016年7月2日