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六月二二日 「日本人の劣化」

桝添東京都知事の公金乱用は呆れ果てて口も塞がらぬ程のことであったが、政治家の不祥事が近年特に多くなったような気がする。刑事事件とならないまでも、道義的に首を傾げたくなることは、私たちの身の回りでも、しばしば目にすることである。

こうした不祥事は昔からあったことではあるが、遡ってみれば、戦中戦後の混乱期から増えたように思われる。殊に主食の配給制度が闇取り引きを生み、一般庶民の遵法的良心を麻痺させることになったように思われる。

他人ごとのように「遵法的良心」などと言っている私自身が自ら振り返ってみると、大きなことは言えない。
五体不自由の身となり、外出できなくな。た最近こそしなくなったが、元気な頃は、車の往来が無ければ赤信号を無視したりしたものである。

考えてみると、古来日本人は欧米人と比べて、ルールに甘いところがあるようだ。もう半世紀も前のことになるが、アメリカ企業視察団参加を命じられ、その一員として渡米したことがあった。その折、乗っているバスがアリゾナ砂漠で十字路にさしかかった。前後左右を見渡しても無人の荒野が広がるばかりで、人一人、車一台通っていない。にもかかわらずバスは赤信号で停車し、青に変わるまでやや暫く動かなかった。最近の交通道徳がどのような状態か知らないが、日本ではこのような時、大半のドライバーは信号無視するのではなかろうか。

そもそも日本人にとってルール=掟(おきて)とは、その時の幕府や藩主のお達しで、一般民衆には、自由を束縛する迷惑なものでしかない。これに対しアメリカでは、西部劇で見るように、ルールは自分たち仲間同士で取り決めた約束事が発祥である。だから高度化した今日の法律も、自分たちが決めたものという主権者意識が強いのだろう。

また、日本人には、幕府の秩序を乱し切腹させられた四十七士を英雄視し、「大岡政談」のように法律よりもその時その時の実情にマッチした「人情裁き」が好まれたようである。こうした風土が、ともすればルールを軽視する雰囲気を醸すこととな。たのかも知れない。

顧みると企業や団体職員の公金使い込みの中には、長年にわたり巨額のものがあり、管理体制はどうなっているか現役を引退して久しい老骨には理解に苦しむケースが少なくない。

一方先頃発覚した天下の三菱自動車の、製品自動車の燃費改竄(カイザン)のような、経営幹部まで巻き込んだ不正事件もある。

また毎日のように報じられる振り込め詐欺・親による嬰児殺し・考えられないような紳士の痴漢事件・さらにそれを逆手に取った女性による恫喝など、日本人はなぜかくも劣化したのだろう。

原因はいろいろあるだろうが、最大の要因は大東亜戦争に負けたことであろう。明治維新以来ひたすら西欧先進国を追いかけ世界の五大強国に名を連ねたものが、一転して敗戦国となり。アメリカの占領下に置かれ、それまでのプライドが失われてしまった。

さらにアメリカの占領政策により、過去の文化道徳は全て軍国主義につながるものとして否定されたことも、倫理意識を喪失させることとなった。

また昭和三〇年代半ばよりの高度経済成長は、日本国民を豊かにするとともに、経済優先のエコノミックーアニマルにしたてあげた。高度成長は同時に急速な技術革新を伴い、パソコンの普及をもたらし、事務処理の記録はフロッピーの中に納められて、日頃見直されることなく、不祥事の温床となったことと思われる。

以上さまざまな要因が重なって、日本人の道徳意識が劣化し、数々の犯罪や不祥事を誘発することになったと思われる。

戦後七十年幾多の不祥事があったが、高度成長の陰に隱されて大事に至ることは少なかったが、バブル崩壊後は小さな不始末も許容する余裕が無くなり、一挙に露呈することになったということではないか。

その結果企業活動は萎縮し、個人消費は伸び悩み、不正規労働者が過半数を占め、四十歳になってなお結婚もままならぬ有り様となっている。結婚の高齢化は出産に影響し、さなきだに憂慮されている少子高齢化を加速させている。

折も折、舛添東京都前知事の不祥事は、日本人の劣化を象徴する事件であったが、今の日本社会は、憂慮すべき崖。縁に立たされていると、言わなければならない。

安倍政権は一強多弱の現状に胡座(あぐら)をかいて、来たるべき参議院選挙も与党優勢と伝えられていると聞くが、安倍総理よ、日本経済の再生実現とともに、劣化した日本人を矯正する教育に全力を投入してもらいたい。

ramtha / 2016年7月9日