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九月二十三日 「経緯は縦と横」

物事の成りゆき概要を「経緯」と言うが、経は縦糸、緯は横糸を表わしている。元は共に地球上の位置を表わす基準である緯度と経度である。

「緯度」は赤道に平行して地球の表面を南北に測る座標で、赤道を○度として南北おのおの九〇度に至る。北に測るものを北緯、南に測るのを南緯という。

「経度」は、その地点を通る子午線(経線)と本初子午線がそれぞれ赤道と交わる二点を地球の中心に結びつけて得る角度で、本初子午線を基点として東西おのおの一八〇度に至る。東に測るのを東経、西に測るのを西経という。

平易に言えば、地球上の位置を表わすために、仮に引いた線で、赤道と平行に地球を輪切りしたものが横糸で、その線の赤道との距離を緯度と言う。

これに対して、北極と南極を通る輪切りにした縦糸を経線と言う。そしてグリニッジ天文台の上を通る経線を基準の経線(本初子午線)とする。

そしてある地点を通る経線と地球の中心を通る平面と、本初子午線と地球の中心を通る平面の角度を、経度と言う訳で、地球表面にある地点は全てこの経度と緯度によっ
て正確に示されることとなっている。

(注)グリニッジ:ロンドンの東部、テムズ川右岸に位置する、もと王立天文台所在地。一八八四年この地を通過する経線を本初子午線と定めた。

ところで、経は略字で正くは經であるから、巫が縦、韋が横を意味することになるが、どうしてだろう。「韋」と「巠」の字源を尋ねるとする。

「韋」は「字統」によれば、城郭の形である口の上下に、左行・右行する止(足)を加えて巡回することを示す字で「違」の初文、めぐる意のある字という。
韋の金文は次のように書かれている。

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城郭の形はすでに韋の字形に含まれているが、その外にさらに口を加えて包囲(圍)の意を示したものと思われる。防衛のときには衛(エイ)といい、衛は口の四方に止(足)を加えた形である。
衛の金文は次ように書かれている。

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城郭を警護する兵士は、体躯の大きい見るからに強そうな者が選ばれていたのだろう「偉大」は、すぐれて大きいことを意味している。

また水辺に自生する葦(イ=あし)は、世界で最も分布の広い植物の一つで、地中に偏平な長い根茎を走らせ大群落を作り、高さは二mにもなる。そのような大きな水草から、この宇が当てられたのだろう。

「巛一(ケイ=たていと)」は、「字統」によると、縦糸を張った形の象形文字で、經(経)の初文。下部の工の形は、糸の一端を巻き付ける横木である。
巠は縦糸を張っ形で、金文文字では、次のように書かれている。

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垂直に上下の力が保たれているところをいい、人体では頸(くび)と脛(すね)、草木では茎(莖=くき)、道路では径(徑=こみち)・逕(こみち)のように用いる。
剄は頸を切ることをいう。

また、勁(ケイ=つよい・かたい)の莖は、たて糸。垂直のもので力の強くはたらく状態をいう。力は筋力の意である。

経・經(ケイ・キョウ=たていと・すぎる・いとなむ)の經は、交織(異種の糸を交ぜて織ること)の中心となるものであるから、経紀(のりを定め法をつくること。経営すること)経綸(国を治めること)の意となり、横糸の緯とあわせて経緯(いきさつ)といい、経過・過程の意に用いる。経験(ケイケン)は、おそらく欧米語の翻訳語であろう。

軽・輕(ケイ・キョウ=かるい・はやい)について、軽車は戦車で輸送車の輜重(シチョウ)と区別したもの。のちに軽重の意となり、軽羅(軽い薄いもの)軽輩(身分の低い者)のようにいい、人を軽んずることを、軽侮(ケイブ)・軽蔑(ケイベツ)という。

以上「経」と「緯」を見てきたが、経度・緯度の「経緯」は、欧米文明の渡来とともに、経度はlongitudeの、緯度はlatitudeの翻訳語として作られたもので、新しい概念に違いない。

考えてみると、機織(はたお)りは、家を建てる技術とともに古代では、貴重な技術であったに違いない。その機織(はたお)りは、縦糸と、縦糸の横から通して縫い織る、箴(おさ)に取り付けられた横糸(緯)で一枚の布が出来る。そこから、経緯(ケイイ)は、縦糸と横糸で構成された布全体、すなわち物事の全体像を意味することになったのではないかと考えられるが、どうだろう。

ramtha / 2016年10月5日