筋筋膜性疼痛症候群・トリガーポイント施術 ラムサグループ

心と姿勢

 シェークスピアの俳優だったF.M.アレクサンダーは、舞台での朗誦の際、声が出なくなると言うアクシデントに見舞われ、それを契機に自分の姿勢や体の使い方、感情の動きなどを見つめ、それを修正して行くことで声が出るようになりました。

 その過程で彼は、自分自身の体の誤った体の使い方が、体の限られた一部ではなく、体全体に影響を及ぼしている事、また、その誤った体の使い方は、意識にのぼらない心の働きが関係していることに気づき、心と身体の調和のとれた相互作用が様々な症状を緩和して行くとしています。

 「動作法」を開発された成瀬悟策先生は、脳性小児マヒの子どもの動作訓練などを通して、心と身体が一体であり、姿勢は心に影響を及ぼし、心は姿勢に影響を及ぼしている事に気づかれました。確かに私たちは肩を落とし、うなだれた姿勢で怒ったり笑ったりすることが出来ません。喜びの感情が心にあるときは、身体も喜びを表現し、失望や哀しみがあるときは、身体もそれを表現します。

 また、痛みやこりと言った筋骨格系の疾患は、自分がストレスをからだに転化してきた結果でもあるとされています。成瀬先生の言葉をご紹介します。「身体部位や関節の痛みということになると、骨格構造や神経の異常のような生理的問題として取り扱われ、指圧、鍼灸、マッサージなどのような外部からの物理的な刺激や鎮痛剤などによって対応する事が最も一般的ですが、それらはいずれも一時的な対症療法の域を出ないものばかりと言って良いでしょう。なぜなら、そうした問題の発生源が、からだへの無理な力の入れ方、筋の過剰な緊張の仕方であるにもかかわらず、それへの対応を考慮することなく、凝りや痛みという表面的な症状にとらわれているためです。」

 「痛みや凝りを生じるほど筋肉が過剰に緊張しているのは、日常のストレス、不安定な気持ちや悩み・困難などへの処理の仕方によるものなのです。そのような問題を認識していても正面から受け止めて自ら解決したり、処理したりすることを避けている場合もありますし、無意識下の反応は自ら気づくことが無いまま、過剰な緊張やよけいな動き、偏った姿勢などの形でからだを犠牲にして気持ちの安定を図ったり、フラストレーションから逃れようとしたりしています。ですから、それらに気づき、からだに対する態度を変えなければ、いつまでたっても問題は片づかないばかりか、ますます大きく困難になるばかりでしょう。」
 
 実際ワークで身体を伸ばしたり、捻ったりして行くと、知らず知らずに入っている緊張に気づいてきます。「一番簡単な事に見えて、一番難しいのが力を抜くと言うことです」と説明しますと多くの方がうなずかれます。意識して入れている力は抜くことが出来ますが、無意識に入れている力は抜くことが出来ないのです。

 ワークを通して、心と身体が一つであることに気づいて行くことがとても大切です。そして、様々な心的症状が現れて来たときは、しなやかな身体と姿勢へと戻して行く事で、心もしなやかさを取り戻し、様々な身体的症状が現れて来たときは、症状にとらわれないしなやかな心を保つことで、身体的症状を緩和させる事ができるのです。

参考書籍:「アレクサンダー・テクニークによる変容の術」
                  グレン・パーク著 新水社刊
       :「姿勢の不思議」成瀬悟策著 講談社刊
       :「リラクセーション」成瀬悟策著 講談社刊  

ramtha / 2005年12月31日